6月3日。本番を終えたクニトオケの練習がなくなり、すっかり静かになった石神井公園ふるさと文化館で、今日も石オケの練習は続きます。今日から練習開始時間が早まり7時集合になったはずが…集合時間を過ぎてもマエストロはじめ講師の先生方の姿が見えません。というのも、駅前の居酒屋で6時から行われているクニトオケの打ち上げに顔を出してから練習に駆けつける計画だったからのようです。振り下ろし時間ギリギリにあたふたとやってきたマエストロ。アルコールは飲らないマエストロですが、宴会気分はかなり引きずっている様子です。しかも
「約1名、出発の遅れている講師がいますので、今日は、アンコール曲とモーツァルトからやります。」
そういえば、伊東先生の姿が見えません。今日からは全曲通しの予定ですので、ドヴォルザークのコンマスがいないと困ります。ところが、居酒屋からの途中経過が入り
「伊東先生は、二次会に行ったそうです。」
え~~~、うそでしょ!
ま、とにかく練習を始めましょう。
アンコール曲としては、今回が最後になるかもしれない『カヴェレリア・ルスティカーナ』を心こめて練習した後は、モーツァルトのディヴェルティメントです。マエストロはモーツァルトを始めるとどんどん気分が高揚してきて、言いたいことが湯水のように湧いてくるタチらしく、今日も矢継ぎ早に細かい指示が飛びます。そして言葉で伝えきれなくなると
「ちょっと、どいてください!」
と、ついに団員の席に陣取って、オーバーアクションで演奏を引っ張り始めました。椅子と楽器を奪い取られたヴィオラ奏者はマエストロの強引な「振ってください」のひと言で、あきらめ顔で指揮台へ。にわか指揮者が誕生しました。
「いやぁ、みんなすごく一生懸命弾いてることがわかってよかったよ。順番にやってみるといいよ。」
満更でもない表情で、にわか指揮者は感想を語ってくれました。
さて、モーツァルトで思いのほか時間を使ってしまい、今日の全曲通しも絶望的となったところで、ようやく伊東先生が登場!と思ったら、ずいぶんご機嫌な様子です。
「今日は、伊東先生は体調不良のため、演奏できません。後ろで聴いていてもらいます。」
そういう訳で、ドヴォルザークは団員のみで演奏することになりました。ところが、体調不良のはずの伊東先生、ここからが大活躍です。いつもは朴訥とした話し方の先生が、マエストロを遮って、今日は雄弁に様々な指摘を飛ばします。しかも、その内容も
「僕の解釈では、この4拍目のアクセントの意味は、云々かんぬん……」
と、いつもよりかなりハイレヴェル。冴えてます!
伊東先生は一杯(いっぱい?)飲ってた方がいいのかな??
小声でつぶやいたマエストロのひと言を、筆者は聞き逃しませんでしたよ。
結局、ドヴォルザークの第5楽章と第4楽章を終えたところで、練習はタイムアップ。開始時間を早めたにもかかわらず、今日も全曲通しはできませんでした。
練習会はあと2回を残すのみ。これで本番を迎えて本当に大丈夫なの?大多数の団員が不安と焦りを抱える中、マエストロと講師陣は、比較余裕ムードが漂っているような…これはいったい何としたことでしょう…??
あ、わかりました!きっと、何も言わないことで、逆に団員の危機感を煽って、本気魂を湧き起こさせようという深~い考えに基づいた作戦に違いありません!こうなったら、作戦にハマったフリをして、あと二週間、本気魂全開で駆け抜けて、『大人の底力』を見せつけようではありませんか!!
by A.E.<Vn>