10月5日。諸事情により、この日の練習会は珍しい場所で行われました。
銀座の少し先、築地にある『浜離宮朝日ホール』が今日の会場です。石オケ、練馬区を飛び出して、ついに都心進出です!
ホールと言っても、もちろん舞台上で練習できる訳ではなく、練習場は裏口の横にあるリハーサル室という倉庫のような場所ですが、とても広いので、ふだんのキツキツ状態から解放されて、今日はゆったりした気分で練習できそうです。
前半は、前回やり残したウィルソンの組曲第4曲から第6曲までの譜読み(と言っても本番仕様のテンポだったのはご想像のとおりです)と通しを1回行いました。前回の練習では、楽譜を追うのが精一杯の筆者でしたが、今日は他のパートを聴きながら弾く余裕も生まれ、この組曲の快活さや愛らしさを感じることができたように思います。
休憩前にマエストロ。
「今日はいつもと違う場所に来たので、いつもと違う面白いことをやろうと思います。」
後半は、モーツァルトのディベルティメントを題材に講師の先生方4人が10分ずつミニ講義を行うことになりました。「新入団員のための自己紹介も兼ねて」というあたり、マエストロもなかなか洒落たことを考えましたね。
最初に登壇した手塚先生は、第二楽章冒頭の6つの音(2小節)に持ち時間の半分以上を費やしました。最初の二部音符の重音から次の音にきれいにつながるように、6つ目の音ははっきりしたスタッカートで、先生の納得がいくまで何度も何度も繰り返しました。たった6つの音に全神経を込めることで楽章の最後までよい流れで気持ちよく演奏できることを実感しました。
次の李先生は、同じ第二楽章を題材に、強弱のメリハリをはっきりつけることを指導していただきました。
三番手は初登壇の大木先生。小声でちょっと自信なさげな表情で第一楽章を振り始めまたところで、急に
「この最初の3つの音はどこに向かっているでしょうか?…はい、西谷先生」
といきなりマエストロを指しました。
「えっ、あっ…」ととぼけるマエストロ。なんだ、このわざとらしい雰囲気は…そういえば、前の李先生もヴィオラの弾き方について、いきなり手塚先生を指していました。
なるほど、そういうことですね。
休憩時間にマエストロを中心に講師の先生たちが何やら作戦会議をしていました。いつもマエストロが講師陣に対して行っているように、今日は先生たちが他の先生に質問攻撃を仕掛ける時間をミニ講義の中に仕込むことにしたようです。
しかし大木先生も李先生も、先輩の先生が仕掛けのお相手だったこともあってか、遠慮がちというか、演技力不足というか、切れ味が少し足りないようでした。
さて、最後に登壇したのが伊東先生です。それまで後ろの方でニヤニヤしながらミニ講義を聴いていたマエストロは、なぜか楽器を手にしてコンマスの席に陣取っています。第三楽章を振り始めた伊東先生。どんな質問攻撃を仕掛けるのかと思っていたら
「ここ、ここはこういう風に弾いてください。」
と、腕をマエストロの方に向けて大袈裟に振りながら模範演奏を要求しました。
これは、マエストロがいつも伊東先生に模範演奏をさせるときのセリフです。
伊東先生、してやってりという感じでとっても嬉しそうです。
マエストロ、今日は完全に仕返しされました。
マエストロが「えぇー」と、ちょっと嫌そうな顔をしながらワンフレーズ弾くと
「すばらしい!この音、この音で弾いてください。」
とますますノリノリの伊東先生です。
ヤラセの寸劇とわかってはいますが、伊東先生もマエストロもさすがの演技力で笑わせていただきました。
「最後に、今日一番練習した第二楽章の成果を確認しながらもう一度演奏して終わりましょう。」
と、締めの言葉も100点満点の今日の伊東先生でした。
by A.E.<Vn>