9月もはや下旬、すっかり日が短くなり、とっぷりと日が暮れてから練習に向かう季節になりました。第8シーズンの練習も今日が3回目。団員どうしの再会の挨拶もひとわたり済み、練習室には、いつもの嗅ぎなれた空気が戻ってきました。
こちら中低弦チームの席は、開始時間前からほとんど全員集合し、にぎわっていますが、時間ぎりぎりに駆け込んでくる団員が多いヴァイオリンチームの席はスカスカです。この光景もいつもどおりで、何だかほっとします。
練習の前半は、芥川『トリプティーク』の第二・第三楽章の復習です。第二楽章の哀愁に満ちたメロディーを弾いていたら、世界中が閉塞感に包まれていたこの一年のことが心に浮かんで、しみじみとした気持ちになりました。
第三楽章は、前のシーズンからトリッキーな弓使いと変拍子で、みんなが苦戦している楽章ですが、今日のマエストロは珍しく?セクションごとに区切って、ゆっくりのテンポから丁寧に進めてくださったので、だいぶ弾けるようになり、また他のパートの音も聴けるようになりました。
「もう大丈夫ですね。このテンポは今日が最後です。次は本番テンポです。」
だそうです。
後半は前回に続いて『死と乙女』を通しました。
「お、だいぶ練習してきましたね、前回よりずいぶん短く感じました。」
いえいえ、そんなに練習はできていませんが、筆者も確かに前回よりは楽しく弾くことができました。が、実をいうと高音部を中心に、弾いてる「フリ」でやり過ごした部分が多数ありました。通し練習の形で繰り返していても、永久に弾けるようになる気がしません。マエストロ、じっくりさらえるパート別の練習の機会をどこかでぜひ設けてください。
さて、「指される」のが苦手な伊東先生ですが、今日もやっぱり指されていました。
マエストロの「ここはどう弾きますか?」の問いには、模範演奏で答えて
「こういう感じ…」
と相変わらずでしたが、『死と乙女』の第一主題のp(ピアノ)の弾き方を問われ、突然
「ショソク…かな」
?ショソク?? あ、「初速」ですね。いきなり難しい漢字二文字が出ました。
すると続いて
「ピアノっていうのは、単に弱いのではなくて、中にエネルギーを蓄えていて云々…」
といきなり形而上学的なことを語り始めた伊東先生。一瞬、毛利先生が乗り移ったのかとびっくりしてしまった団員一同でした。
練習会の雰囲気もだいぶ思い出してきたのか、マエストロも団員たちも徐々に調子が出てきたようです。緊急事態宣言も月末での解除が決まり、次回からは練習時間が延長できるかもしれません。この調子で、がんばっていきましょう。
by A.E.<Vn>