3月に入りました。本番まで、あと3か月あまりとなりました。今日の練習会、冒頭からマエストロが怪しい呪文を唱えています。
よかった、っよね、っグッド、ファゴット
だったら、バッハ、バッハ、
しまった、しまった、ショックっぽい、やってくる …
「ファゴットが何?」 「バッハなんて演奏したっけ?」
などとよけいなことを考えてはいけません。これは、ドヴォルザーク弦セレ第五楽章の中間部で、ヴァイオリンパートが掛け合いで奏でるミステリアスなメロディーに、マエストロが「ひと晩、考えて」つけた歌詞です。長々と続く難しいリズム取りの助けになるように、とのマエストロからの愛のプレゼントなのですが、どうしても、怪しい歌詞の方が気になってしまいます。
マエストロの呪文と言えば、昨年のルドルフ・ハケン協奏曲の時の
「クニト、ユウキ、クニト、ユウキ、クニトだ」
が懐かしく思い出されますが、(詳しくは こちらをどうぞ)今シーズンの呪文は、ずいぶん長いです。だんだん「じゅげむ、じゅげむ」みたいになってきた感があります。
左は、歌詞を熱唱しながら指導するマエストロを唖然茫然の表情で見上げているヴァイオリンパート団員の図です。
まあ、まあ、ともかく、だまされたと思ってやってみましょう。
はい、ちゃんと心の中で、「よかった、っよね、っグッド、ファゴット…」と歌ってくださいね。
やってみると、フムフム、なかなかよくできています。小さい「つ」の字の使い方が絶妙です。しかし、問題点が二つほど見つかりました。
第一は、アクセントの位置が標準語と違っている点。前半はよいのですが「バッハ、バッハ、しまった、しまった」の部分が関西アクセントになっています。
第二は、最後の「ショックっぽい、やってくる」のフレーズが、何度も繰り返される点。この歌詞が演奏者の心理に与える影響が懸念されます。
この歌詞。どうやら改善の余地がありそうです。もっとよい歌詞を思いつかれた方は、ぜひご提案をお願いします。
おっと、すっかり国語の時間になってしまいましたが、肝心の演奏の方です。第五楽章、今日は、本番よりゆっくりのテンポではありましたが「予想以上によく弾けている」と、マエストロもまずまずの感触を得たようです。付点音符をもっと鋭く、軽くといった課題はありますが、”よかった、っよね♪”を唱えながら、この調子でがんばりましょう。
後半は、オクテットの第四楽章。この日、筆者らは、本練習の前に練習会場の別室で、さらにその前に、近所の団員宅で、この楽章に関してはたっぷり自主練を積んできました。今日は、満を持して演奏に臨みます。他の団員たちも、それぞれに熱心に練習してきたようで、以前は迷子が続出だった掛け合いの部分も、みんな自信をもって弾いています。「みなさん、すばらしい!!」と満面の笑みのマエストロ。「それでは、本番のテンポでやってみましょう!!」といつもどおりの展開へ。それでも今日の団員はひるみません。堂々、最後まで弾き切りました。
しかし
練習の終わり近くに駆けつけてくださり、後方で演奏を聴いていた伊東先生。マエストロから「どうでしたか?」と感想を求められ、「すばらしい!!」と大絶賛かと思いきや…
抑えたトーンで
「もっと全体のバランスを考えて、今、誰がメロディーを弾いているのかよく聴きながら演奏しよう。せっかくよく弾けているのだから。」
と、とっても冷静なコメントをいただきました。
そう、今はまだ「自分のパートが弾けた」段階に過ぎません。オーケストラの演奏は、ここからがスタートなのです。残り3か月。オーケストラとしての完成を目指して練習を重ねていきましょう。
by A.E.≪Vn≫