この日は、前回練習した『ホルベルク組曲』の「間」の復習に加えて、新たにチャイコフスキーの『弦楽セレナーデ』も練習開始。第3・4楽章からスタートです。
この日は、ヴァイオリンの講師の先生が、全員お休み、さらに弦セレのコンマスも欠席ということで、マエストロは、一人何役もこなして孤軍奮闘でした。
「いつも最初からテンポが速すぎてついていけない」という団員たちの声をうけて、マエストロは「今日は、ゆっくりテンポでやります!」と宣言して練習が始まったはずでしたが…
『ホルベルク組曲』の練習は、前回の「間」の確認も合わせて行っていきます。こだわりの「間」を熱く語っているうちに、マエストロはいつしか「ゆっくりテンポ」を忘れ果てていき、楽器を手に取って、自ら第5楽章のソロを弾き始めたと思ったら、合わせるヴィオラの手塚先生もびっくりのハイテンポで始まりました。が、そのうち「やっぱり弾きながらでは無理だ」と今度は、ソロのメロディーを歌い始めた!いつもの「顔芸」ならぬ「口芸」を駆使して、今日もエンジン全開のマエストロです。
後半のチャイコフスキーに入ってからも、マエストロのパワーは衰え知らず。第3楽章では、要所要所で演奏を止めては、楽譜のあちこちに「ま」の字を記入を要求していきます。初練習で楽譜を追うのが精一杯の状態で「間」にも意識を向けるのは、団員にとってかなりの難行です。
第4楽章。主要なアレグロの部分は、お約束どおりのゆっくりテンポで、音程を確認しながら進みましたが、第1楽章冒頭のテーマの再現部に至ったところで、またマエストロに火がつきました。フィナーレに向かって、テンポも強弱も極端に揺らしていく構想を試してみたい様子のマエストロ。ますます「口芸」が冴えわたります。
「ここからバ~~~っと盛り上げていって、チャンチャンパラパラ、チャンチャンパラパラ、チャンチャンパラパラ。チャンチャンパラパラ、パン、ジャンジャンジャン、パ~ン、パ~ン……ジャ~~~ン、といく訳です…」
長嶋監督に打撃指導を受けている気分で呆気にとられる団員一同。
「これは面白いから、ちょっとやってみましょう!!」
練習初日ということとは無関係に、すぐに本番モードを試したくなるマエストロです。またまた「ゆっくりテンポ」の約束を反故にして、超高速のフィナーレとなりました。「438小節からはプレスト」と楽譜に書いていないテンポまで上げようとするマエストロに、
「チェロは4弦使うから、これ以上のテンポは無理だよ」
毛利先生から、救いの一言が出ました。やはりマエストロエクスプレスを止められるのは毛利先生だけのようです。
右の写真、みんな真剣に楽譜と向き合っていますが、実はこれ、休憩時間の一コマです。
「アメリカでは、休憩時間に楽器に触る人は誰もいません。休憩時間に練習するのは日本人だけです。」
とマエストロはいつも笑います。それでも寸暇を惜しんで練習してしまう、名前は「インターナショナル」でも、体質は思い切り日本的な石オケです。
各パートごとの真剣な表情、もう一度よくご覧ください。
さて、次回の練習会はパート別の分奏です。フィンガリングなどの技術的な疑問を解決するよいチャンスです。練習を実りあるものにするためにもしっかり予習をしておきましょう。
by A.E.<Vn>