11月17日。今日は、今シーズン2回目の分奏練習です。
いろいろな先生方から角度の異なるアドバイスがいただける、わからないところやできない部分をしっかり確認できる、と団員たちに好評の分奏練習が、今年度はシーズンの始めから回数を増やして行われています。
今日も、ヴァイオリン・ヴィオラの高中弦組とチェロ・コントラバスの低弦組の二手に分かれて、それぞれ音程やリズムを確認しながら、ポイントを絞った練習を行いました。
低弦組の講師は、もちろん毛利先生。
先生も生徒も「大人」が中心のこちらの部屋は、いつもながら格調高い雰囲気にあふれています。内容の方も、「いつもどおりの格調高いレッスン」だったようで「チャイコフスキーの弦セレ全楽章について、たくさんの弓の奏法を丁寧な説明とお手本を示しながら、じっくりと指導していただきました」とのことでした。
一方、高中弦組の大所帯を指導してくださるのは、こちら、手塚先生です。
今日は、一段と男前でカッコいい手塚先生です。
一瞬、今日のレッスンはエアロビクスから始まるのかと思ってしまいました。
練習前半は、こちらも弦セレ全楽章をポイントを絞りながらさらいました。「みんな、よく弾けてますね。」ととりあえずお褒めの言葉をいただきましたが、手塚先生、石オケの弱点を次々とするどく指摘していきます。
自然に速くなったり遅くなったりしがちな部分では、特にきっちりとリズムを刻む意識を持つこと。同じ音を二連打すると、必ず後の音の方が目立ってしまうので、前の音の方を意識すること。音が上向すると自然に強くなっていってしまうので、ここには、見えないディクレッシェンドがあるつもりで……
感覚だけで、ただ漫然と弾いていると陥りがちな悪いクセが、私たちにはこんなにたくさんあるのだ、ということを気づかせてくれた前半のレッスンでした。
ものすごく集中した真剣な前半のレッスンが終了し、小休止となったところで、今日は遅れて会場入りしたマエストロが登場。後半は、三週間後に本番を控えている『ホルベルク組曲』を行うことになったのですが…
第五楽章のヴィオラのソリストは、実は手塚先生です。でも今日は指揮者なので、さて、どうしよう…
「あっ、ちょうどいい人がいるじゃないですかァ」
と、思わず膝を打った手塚先生。もちろん指名されたのは、マエストロ西谷先生です。
えっっっ…
一瞬、青くなったマエストロ。必死の形相でソロの練習を始めます。
「ヴィオラのソロ、こんなに難しかったっけ?」と言いながら、今度は真っ赤になって楽譜にかぶりついています。飛んで火に入る夏の虫ならぬ、飛んで火にいるマエストロ。後半のレッスンは、何だか楽しい時間になりそう…
さあ、後半のレッスン開始です。後半に入っても、手塚先生のするどい指摘は続き、指摘されたところをちょっと意識するだけで、どんどん音楽が活きていきます。
と、マエストロ、急にケタケタと笑い出します。何かと思ったら
「手塚先生の指揮を見てたらおかしくて、おかしくて。指揮者って、こんな面白い顔してやってるんですね。自分もこんな風に見えてるのかと思ったら、おかしくて…」
いえいえ、何をおっしゃいます。マエストロの指揮は、こんなものじゃないです。前後左右、さらに上下ともっと面白いです。その上、顔芸まで加わるのですから。
手塚先生のみならず、団員一同、一致した意見でした。
ホルベルクも第一楽章から順に進めていったのですが、何やら手塚先生は先へ急ぎたい様子。
「早く第五楽章にいきましょう!」
なるほど、そういうことですね。なら、どんどんいきましょう。
「もう、時間ないですよ。」と何とか第五楽章を回避しようとするマエストロでしたが、容赦なく第五楽章に突入。マエストロは、名誉にかけて、顔を真っ赤にしながら大熱演でした。
「さすが、すばらしい!!!」
一同、拍手の後は、ソロ抜きでピッチカートのリズム感をしっかり復習して、高中弦組の分奏練習はお開きとなりました。
でも、何だか今日の第五楽章は、いつもよりゆっくりだった気がするな、と思ったら、
「本番で仕返しされると困るから」
手塚先生は、少しだけ緩めたというのが真相のようでした。
そして最後は、ヴァイオリンのソリスト・安藤先生も交えて、仲良くスリーショットに納まる両先生です。西谷先生の登場で、後半の高中弦組は、笑いに包まれた楽しい時間になりました。先週は「クールなマエストロ」だったというウワサですが、この日のマエストロは太陽でした。
by A.E.<Vn>