3月4日の練習会&今日も新年会 〜ショソク〜

  • 2023年3月6日
  • 2023年3月6日
  • 練習
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3月4日。先週に引き続き今日も練習が続く石オケです。

前回は、新規団員のリクエストに応えて『トリプティーク』を譜読みからじっくりと行いましたが、今回は同様にもっとじっくりさらいたいと声が上がっていた『アメリカ』を集中練習する一日となりました。

「この曲は本来カルテットで演奏するところを無理やりオーケストラでやろうとするところに、諸々の点で難しさがあります。」

マエストロの第一声です。

まず、冒頭。ヴァイオリンが弾く大平原の朝風を思わせるようなトレモロに乗せてヴィオラが主旋律を奏でていくのですが、ヴィオラの音はヴァイオリンより低くてくぐもった音である上に、何せ人数が多勢に無勢。ヴァイオリンは極力、音の大きさを抑えなければなりません。ヴィオラの音が必ず耳に届いているような大きさで弾くことが基本です。ヴァイオリンにとっては、弾き始めからかなりストレスがかかります。

しばらく弾き進んだところで

「はい、ストップ、ストップ」

の声がかかります。この曲は、伴奏パート同士が掛け合いをしたり、異なるリズムで重なり合ったりする場面が多いのですが、それがピッタリ揃わないと、振っているマエストロにとっては、とても気持ち悪く感じられるようです。ということは、聴衆の皆様にも気持ち悪く感じられるということにほかなりません。そこでマエストロは、2パートずつ、チェロとセカンド、チェロとファースト、ファーストとセカンドというように組み合わせを替えながら部分練習で音の絡み合いを確認させていきました。そして、最終的に全体で合わせてみると

「ほら、これで気持ちよく合いましたね!」

満面の笑みになりました。この練習は団員にもとても好評で

「他のパートが何を弾いているのか、よくわかった。」

「他のパートの音を聴けるようになった。」

といった声が、あちこちで聞かれました。

先週の復習を兼ねて、一度だけ『トリプティーク』を合わせた後、後半は各パートに分かれて『アメリカ』のボウイングの確認等を行いました。新年会で団員どうしがすっかり打ち解けたおかげで、各パートとも活発に質問し合ったり、議論し合ったりする様子がうかがえました。

さて、本日のエピソードをひとつ。

マエストロが例によってある箇所の弾き方について伊東先生にアドバイスを求めた時、伊東先生は、いつものよう何度か弾いてみてボソっと一言

「う〜ん、初速…かな?」

何人かの団員たちがふむふむと頷く中、マエストロだけ首をかしげながら

「えっ、何ですか?ショソク?ショソクって何ですか?」と戸惑い顔。

団員一同、ちょっと間があってから怪訝な顔をしながら

「最初の速さ」と答えたのですが、マエストロは

「えっ、最初の速さ?それをショソクって言うんですか?」

とまだ腑に落ちていない様子。

はい、そうなんです。マエストロは「漢語」が苦手なんです。アメリカ帰りでバリバリのバイリンガルで流暢な英語を話すマエストロですが日本語、特に「漢語」に苦戦する姿を時々見かけます。もちろん「初速」の意味がわからない訳ではないでしょうが、「ショソク」という音を漢字の「初速」に変換する回路がなかなか働かないようなのです。

ここからは筆者の想像ですが、高校卒業後すぐにアメリカに渡り、10年近く

当地で過ごしてきたマエストロは、あまり硬い日本語を話す機会もなかったでしょうし、またレポートや論文の類を日本語で書く機会もなかったでしょう。

少年から大人になっていく時期に「大人の日本語」を使う経験が少なかったがために漢字変換回路が磨かれなかったのではないかと思います。コスモポリタンにはコスモポリタンの悩みがあるんですね。

それとは裏腹にもう一つ気付いたことがありました。伊東先生は、特にテクニックについて真面目に語る時、けっこう難しい漢語を使う傾向があるようです。ちょっとイメージと違いますが、伊東先生、実は漢字博士だったのでしょうか?

漢字博士の伊東先生と漢語が通じない西谷マエストロですが、このお二人、とても仲良しの先輩後輩なのが不思議です。きっと、言葉ではなく、音楽の力でつながり合っているお二人なんですね。

P.S. 今日も二次会の写真が届きました。この前の新年会の写真と間違えてしまうくらい大人数で盛り上がっています。

 by A.E.<Vn>