3月16日。アメリカ研修旅行(本人弁)から無事に帰国したマエストロによる約1か月ぶりのリハーサルです。ふと気が付けば、本番までもう二月にせまってきました。
今日のタイトルにドキッとした方もあるかもしれませんが、誤解のないように最初におことわりしておきます。講師陣が奏でるセクシーな「音」のお話です。
昨シーズンから、石オケのチェロ陣からグッと深みのある音が聞こえてくるようになりました。人数が充実したこともありますが、何より大きな要因は、講師が二人体制になり、プロの先生が最前列と最後列を支えてくださるようになったことではないかと思います。毛利先生に続いて二人目の講師としてメンバーに加わってくださったのが、この方、大木翔太先生です。
筆者は先日、あるところで大木先生のソロ演奏を聴く機会があったのですが、そのセクシーな音色にすっかり魅了されました。とりわけ素晴らしさを感じたのがレガートの弾き方でした。チェロに関しては門外漢の筆者ですが、ヴァイオリンと比較すると圧倒的に運指の距離が長いチェロは、なめらかに音をつなげることが難しいのではないかと想像します。しかし大木先生は、振り幅の大きなビブラートを巧みに駆使して、ポジションチェンジも移弦もなかったかのように音を紡いでいきました。次の音に移行するギリギリまでビブラートを利かせて音を途切れさせない、こういう技術があって初めてあんなセクシーな音が出せるのですね。
大木先生は「顔芸」もイケてますよ。顔を右左に傾けながら演奏するのが先生の特徴ですが、左45度に傾ける時は、F字孔から流れる自身の音に陶酔しているような表情を、右45度では、陶酔を通り越した恍惚の表情を見せてくれます。(この右45度のせつな気な恍惚の表情が筆者のイチ推しです)
オーケストラの演奏でここまでの「顔芸」が見れるかどうかはわかりませんが、本番では、団員たちより数倍幅広のビブラートとともに大木先生の表情にも注目してください!
もう一人。この日の練習でマエストロを唸らせるようなセクシーな音を奏でてくださったのがヴィオラの手塚貴子先生です。フランク・ブリッジの第三楽章ノクターンは、アンニュイな空気感に満ちた難解な曲なのですが、手塚先生があるフレーズをポルタメントを利かせて弾いた途端、マエストロが突然
「それ!その音です。いいですね~、セクシーですね~」
そして
「今の音、もう一度聴かせてください。」
と、アンコールまで要求しました。確かに、胸の真ん中あたりにグッと刺さる素敵な音でした。これはヴァイオリンには出せない音だな、とヴィオラが羨ましくなるような響きでした。同時に、解釈が難しくてよくわからなかった第三楽章が筆者には急にいい曲に思えてきました。
もちろん、このお二人の先生のみならず、他の講師の先生方もそしてマエストロも、折にふれ、それぞれにセクシーな音を聴かせてくださいます。その度に、いつか自分も自分の音に陶酔できるといいなあ、と思うのですが、そんな日がいつになったらやってくるのか、こないのか、とため息をつく筆者でした。
今日の練習でフランク・ブリッジはだいぶ完成に近づいてきました。しかし、まだほとんどさらえていない曲もあります。ここから、本番に向けて、怒涛の勢いで進んでいきましょう。
by A.E.<Vn>