終わりの見えない酷暑の夏がまだまだ続いている9月14日、昨年10周年の節目を迎え、今年は折り返しの初年度となった石オケの第11シーズンが始まりました。
「ほんとに暑いですね~」が再会の挨拶となる中、練習初日の開始です。
最初は、新入団員の紹介です。今シーズンは各パートに新入団員をお迎えでき、コントラバス団員の嬉しい再入団もあり、またまたフレッシュな陣容になりました。史上最大くらいの人数に膨れ上がり、清瀬の舞台に上り切れるかが目下の心配事です。
次いで西谷マエストロの冒頭のご挨拶。嬉しいニュースです。
かの有名弦楽専門雑誌『サラ〇―テ』に、石オケについて西谷マエストロが語るインタビュー記事が掲載されました!先年、クニトオケの特集記事が掲載されたのに次いで二度目の快挙です!!
「この中で、西谷音楽監督という人は『アマチュアオーケストラにおいては、テクニック面はあまり重要視するべきではありません。大切なのは、その継続性と音楽の幅をひろげることです』なんて語っていますが…」
お、さすがマエストロ、いいこと言いますね~
と感心していたら
「そんな訳ないじゃありませんか。大事なのはテクニックに決まってます!さあ始めますよ!」
マエストロ一流のジョークとともに、第11シーズンの幕開けとなりました。
最初の曲目はモーツアルトの『ディベルティメントK.137』。
スローテンポの第一楽章はいつものマエストロと違って、最初からとても丁寧に細部までこだわった形で進みます。
「今シーズンは古典派の曲が中心なので、丁寧にいきます。」
と言って、数小節進んでは止まり、また進んでは止まりと毛利先生ばりのこだわりで音の質、フレーズ感、各パートの役割などについて細かい注意が飛びます。
そして例によって、パートごとの弾き方について、講師の先生方に矢のように質問を浴びせました。
伊東先生はいつものように模範演奏をしては「こんな感じ」のひと言で済まそうとして許されず「う~ん、う~ん」とうなりながら、あれこれ言葉を紡ぎ出しています。
李先生は「そうですね~…」としばらく考えて
「16分音符4つの後ろにスタカートの音が付くように…『そうですねッ♪そうですねッ♪』っていう感じで弾くとよいと思います。」
と苦し紛れとはとても思えない説得力のある説明をしてくれました。
マエストロの質問攻撃にだいぶ慣れてきた大木先生は、先輩講師陣秘伝の技をさっそくマスターしたようで「ここはどう弾きますか?」という問いに間髪を入れず
「心で弾きます!」
と常套句で鮮やかに切り返していました。
マエストロと講師の先生方のいつに変わらぬやり取りを聞いて、「ああ、これこれ、この感じ」と懐かしいふるさとに戻ってきたような安心感を覚える筆者でありました。
さて、第二楽章に入りました。こちらも丁寧に進むかと思いきや
「二拍子で振っていいですか?」
とマエストロ。団員たちから一斉に え~~ッ とブーイングの嵐。しぶしぶゆっくりテンポで4つ振りを始めたマエストロでしたが、中央のリピートのところまで進むと
「もうわかりましたね。それでは2つ振りで最初から」
結局、普段どおりに戻って初日から本番テンポで振りたがるマエストロでした。
第三楽章に至っては、譜読みの時間もなしにいきなり超高速で始まりました。
いつもの調子に戻ったマエストロは、次曲のクリストファー・ウィルソンの組曲も同様にほとんど譜読みの時間なしに本番のテンポで振り続けるのでした。
今シーズンは丁寧にいくんじゃなかったでしたっけ???
ボウイングもフィンガリングもいい加減にしか把握していなかった筆者は、呼吸することも忘れて楽譜にしがみついているうちに練習が終わりました。
新入団の団員たちは目を白黒させてかなり焦っている様子でした。が、安心してください、これは石オケの平常運転です。
「楽しんで練習していたら、いつの間にか上達していた」
が西谷マエストロと石オケのコンセプトです。マエストロは、最初はこんな感じで始まっても本番では必ず演奏者も聴衆も満足できる舞台に仕立て上げるマジックの使い手です。最初から完璧になどと固くならずに、西谷マジックを信じて練習会を楽しんでください。
by A.E.<Vn>