ちょっぴり大人になりました ~第10回定期演奏会~

5月26日。記念すべき第10回目の節目を迎えた石オケ定期演奏会の日がやってまいりました。

出番は夕方5時30分からですが、石オケ団員にとって定期演奏会の朝は早い。いつものように9時集合です。本番用の衣装に着替え、軽く音出しして音響の確認をした後は、恒例の写真撮影の時間です。まだ眠たそうな顔を、演奏を終えた後のような充実感溢れる笑顔に無理やり作り変えて、無事に写真撮影を完了しました。

石オケの演奏会の日になると、いつも一段テンションを上げてくる伊東先生。今年は衣装でアピールです。マエストロかと見まがうような正装で登場です。カメラを向けるとすぐおちゃらける先生ですが、ひとたび練習を始めるとこの真剣な表情。キマッてますね!

写真撮影を終えると午後4時の再集合まで長い休憩時間となります。このタイムスケジュールにだんだん慣れてきた団員たち。一度自宅に帰る人もいれば、別の弦楽合奏団の練習に参加してとんぼ返りしてきた強者もいました。筆者は、すっかり常連となった清瀬駅前のイタリアンで、数人の仲間とともにランチ兼おしゃべりで時間をつぶす作戦です。店内に足を踏み入れると、あっちにもこっちにも石オケのグループが陣取っています。みんな、考えることは一緒のようです。メニュー選びにもたっぷり時間をかけ、ドリンクバーのおかわりで粘りに粘って2時間。各自の前にグラスやカップが4つくらいずつ並ぶ頃には、普段あまりゆっくりお話ししたことのなかった団員たちとすっかり仲良しになっていました。

ランチの後は、今年もクニトオケの演奏を聴いて過ごすことにしました。最近、クニトオケと石オケが同じ曲目を演奏することが多く、自分たちの演奏曲を客席で聴くことの有効性を知ったからです。今回も共通曲のルドルフ・ハケン協奏曲を聴いたところ、発見がありました。昨年よりぐっと人数が増えたクニトオケのキッズたちのエネルギー溢れた演奏によって、ハケン先生のソロがかき消されてしまっていました。5弦ヴィオラは意外に音が響かないことに気付きました。これは、マエストロにお伝えしないといけませんね。それはともかくキッズたちの演奏は素晴らしく、アンコールの『ホルベルク組曲』が超高速で終わったと思ったら、もう一度走り出てきたマエストロが指揮台に飛び上がると、さらに超・超高速の『ホルベルク』が始まり、万雷の拍手を浴びました。

再集合の4時になりました。毎年この時間になると開場時間ギリギリまで最後の悪あがきを始める団員たちの姿を見て、マエストロは今回新たな提案をしてきました。

「自由参加の非公式のワンポイントレッスンの時間にしましょう。」

本番前の「弾き過ぎ」防止を目的とした時間でしたが、これがなかなかよい時間になりました。いつもの練習室とは違う舞台の上で、しかも講師の先生方が不在の状態で演奏を聴くと、マエストロにも新たな課題が見えてくるようで、具体的で有益な指摘をたくさんいただくことができました。

「ブルッフの第4楽章、これはコラール(讃美歌)のような曲なので、歌うようなつもりで弾くと弾きやすくなると思います。」

「みなさん、全体にフラット(♭)が甘いのがちょっと残念です。自分で思うよりもう気持ち低く。」

等々。本番前に目を見開かれるお話でしたが、西谷先生、それ、もう少し早く言っていただいたらよかったのに…

5時30分、定期演奏会の開演です。もちろん100点満点とはいかない部分もありましたが、今回の演奏、かなり抒情的で攻めた選曲を乗り超えて、石神井Int’lオーケストラはオーケストラとして一皮むけてちょっぴり大人になったかな、と感じる部分もありました。以下、曲順に筆者の感想を述べます。

1 エルガー『弦楽セレナーデ』

曲の完成当初から、マエストロから「石オケのエルガーはかなりレベルが高い」と評価していただいたこの曲でした。その評価に恥じない演奏ができたのではないかと思います。マスタークラスでご指導いただいたニック教授から伝授されたPiacevolleの快活さに大人の情緒を加えた新たな石オケのサウンドをアピールできたと思います。

2 ブリッジ『弦楽オーケストラのための組曲』

今回、最も時間をかけて格闘し極めてきた楽曲でした。英国の作品らしい壮大さと現代曲っぽい洒落っ気を兼ね備えた難曲で、トリッキーな転調や気だるいブルース調のノクターンに苦労しましたが、4つの組曲それぞれの神髄に触れた大人の演奏ができたと信じます。ノクターンの中でチェロとヴィオラが奏でる印象的なソロも、それぞれ団員が担当し、カッコよく決められたことも石オケの成長のひとつに数えてよいのではないかと思いました。

3 ブルッフ『スウェーデン民謡によるセレナーデ』

小曲ながらかなりの難曲でした。スローテンポの第2曲と第4曲の解釈と弾き方に最後まで苦労しましたが、本番直前のマエストロの「コラール」という言葉に大きなヒントをいただいた気がします。個人的には、もう少し極めてみたい曲でした。

4 ハケン『5弦ヴィオラのための協奏曲』

クニトオケの演奏で感じた音のアンバランスは、会場で聴いていた他の団員たちも一様に感じていたようで、石オケは大人の判断で、意識して音量を下げた演奏を心がけました。ハケン先生から5弦ヴィオラの音がかすれてしまうので、あまりテンポアップしたくないとのリクエストがあったそうで、マエストロが以前よりゆっくり、そして丁寧に振ってくださったこともあり、これまでで一番落ち着いて演奏できました。ブルース冒頭のスローヴィブラート、コンマスの伊東先生が遊び心を見せて、かなり大袈裟に利かせていたので、自分のパートでも真似してみる余裕も生まれました。伊東先生ほど上手くはいかなかったけれど、こんなに楽しみながら弾けたのは3度目で初めてでした。そして最後の『ヴァルプルギスの夜』だけは、全員ではじけ切って楽しく弾き終えました。

ハケン先生は、アンコールとして、5弦ヴィオラ版に編曲したバッハのガヴォットを演奏してくださいました。この楽器独特のかすれ音を巧みに利用した斬新な弾き方で、薄墨でさらさらと短冊に散らし書きしたみたいなバッハだな、と思いました。

難曲、大曲満載の今回のプログラムでしたが、思ったよりは余裕で弾き切れたと思って、振り返ってみたら、いつもは本番になると急に高速になったり、何か事を起こそうとしたりするマエストロの指揮が、今日に限ってとても丁寧で落ち着いた「安全運転」だったことに気付きました。もしかして、大人になったのは、団員たちだけでなく、マエストロも同様だったのかもしれませんね。

最後は、石オケのテーマソングになりつつある芥川の『トリプティーク』で締めました。マエストロがもう一度飛び出してきて超高速芥川を振り始めたらどうしようかと心配しましたが、何も起こらず無事に終演となりました。

終演後は、ホームグラウンドの石神井公園に戻って、マエストロ御用達の中華料理店でいつものとおり打ち上げの大宴会でした。なかなか戻ってこないマエストロを無視して毛利先生の音頭で始まった「練習」の乾杯がそのまま「本番」となり、マエストロが到着する頃にはすでに宴たけなわとなっていたのでした。

第11シーズンは9月開始です。今回ご一緒できた多くのみなさまと次のシーズンで再会できることを楽しみにしています。

最後になりましたが、4回目となる共演をいただきましたルドルフ・ハケン先生、ご指導いただいた西谷先生はじめ講師の先生方、賛助出演の皆様、前回に引き続きこちらは100点満点のステージマネージメントと会場運営を担ってくださった東京農業大学OBOG管弦楽団のお二方、多方面に奔走してくださった事務局の皆様、熱心に耳を傾けてくださったお客様、そして楽しい時間を共有してくださった団員の皆様にこの場を借りて感謝いたします。本当にありがとうございました。

by A.E<Vn>