石神井Int’lオーケストラ|第9回定期演奏会 〜Chat GPTのお告げに導かれて〜

5月7日。石オケ第9シーズンの集大成の日がやってまいりました。「風薫る5月」のはずでしたが、この日の天気予報はかなり前から「雨」と出ていました。前日5月6日に、石オケは最後の総括練習を行いましたが、その時のマエストロの発言です。

「私は、今話題の人工知能Chat GTPに色々質問してみることにはまっていまして、先日、『雨の日の演奏会』について質問してみました。すると…」

その答えは「晴れの日よりよい演奏ができる」とのことだったそうです!

その理由は、

  1. 雨の日に満席は望めないが、実は客席に適度な空席がある方が音響効果が上がる
  2. 雨の日にわざわざ足を運んでくる聴衆は耳が肥えた人々なので、その空気が演奏者にも伝わり、演奏の質が上がる

からということでした。多少、苦し紛れな感じが無きにしもあらずですが、Chat氏、ポジティブで前向きなことを一生懸命考えてくれて、なかなかいいヤツですね。

そんなChat氏のお告げに励まされながら、当日の朝を迎えました。今回もクニトオケとの同日開催のため、大人組である石オケは朝9時集合、舞台リハーサルと写真撮影をしたら再集合の16時10分まで長い休憩に入るという変則スケジュールになっています。

写真撮影の前に、さっそく舞台上でのリハーサルです。舞台中央には、例の東海林先生のハープがドーンとパルテノン神殿のようにそびえ立っています。こうして舞台に据えられた姿は、ふる文の多目的室で見た時とはだいぶ趣が違って、グンと本番気分が高まってきました。

リハーサルは音響効果の確認と場面転換が目的なので、曲の一部分だけ切り取って行われました。モーツアルトとチャイコフスキーは順調に合格点をもらえましたが、マエストロには『アメリカ』だけどうもしっくりこない様子です。冒頭部分をはじめ伴奏パートはひたすら弱い音で、pp(ピアニッシモ)はp3つ分くらい弱く、と言われて練習してきたのですが、大きなホールの中ではもっとしっかり弾かないと全然聴こえないということが判明しました。そういう訳で、前言撤回、強弱記号は逆に二段階くらい強く、p(ピアノ)はmf(メゾフォルテ)くらいで弾いてください、ということに急遽なりました。

「セカンドの2列目以降は全然機能していません。」

というマエストロの言葉を聞いて、その2列目の筆者は燃えましたよ。

そういうことなら、ガッツリと弾いてやろう! と。

ギアを上げてTAKE2。今度は合格点をいただけました。

リハーサルを終えて、ランチタイムに外へ出ようとしたところで、予報どおり雨降りとなりました。かなりのザーザー降りです。街歩きの気分にもなれず、待ち時間は14時からのクニトオケの公演を聴いて過ごすことにしました。そしてこの時間がとても有意義なものとなりました。今回、クニトオケの曲目は石オケとかぶっているものが2曲ありました。モーツアルトの協奏曲とチャイコフスキーの弦セレ(クニトオケは第一、第四楽章の短縮版)です。この2曲を客席で聴くことで、大いに自分たちの演奏の参考とすることができました。特にモーツアルトについて、曲の全体像が掴め、その中で伴奏パートがどこに気をつければよいかが見えてきて、とても勉強になりました。演奏側に座っていると、楽譜を追い、休みの数を数えるのに必死で全体が全く見えていなかったことに今さら気付きました。それでもこの演奏を聴けたことで、この曲の楽しさ、美しさが身体に染み込み、何だかウキウキした気分で舞台に立てるような気がしてきました。

クニトオケの公演が終了するのを待ちかねたように、団員たちが舞台に集まってきました。気づいてみたら、ほぼ全員が自分の席にかじりついて必死に最後の練習をしています。この時になって必死になるくらいなら、もう少し前からやっておけばいいのにね、と思いながら、筆者も必死になって、一度もできたことのないフレーズの練習にいそしんでいます。

「はいはい、もうそんなに練習しないでください。本番は疲れるんですから。」

とマエストロが叫んで回っているのも、いつものとおりの光景です。

そうこうしているうちに、あっという間に開演の時間です。やはり雨の影響でしょうか?客席は例年より空席が目立っていますが、お客様は好みの席でゆったりとリラックスしておられるようにも見えます。

第一曲目 ドヴォルザーク『アメリカ』第一楽章

リハーサルでのどんでん返しで急遽大きい音を出すことになった訳ですが、逆にその効果でこれまでで一番堂々とした演奏ができたように思います。客席でどのように聞こえていたかはわかりませんが、演奏者としては満足できた演奏でした。

第二曲目 モーツァルト『フルートとハープのための協奏曲』

最後の追い込み練習の成果でソロの演奏を邪魔することなくよい演奏ができたように思います。課題だった第二楽章の3小節目も本番の気合で乗り切れました!筆者もクニトオケでの予習のおかげで、楽しみながら演奏でき、東海林先生と西谷先生のソロを堪能するだけの余裕もありました。ハープも間近で聴くと可愛い部分は可愛く、優雅な部分は優雅にと七色の音が作れることがよくわかりました。西谷先生のヴァイオリンは、ヴァイオリンならではの編曲も加えられていてフルート以上にフルートっぽい音で、本当に天からの声に聞こえました。全編の動画はこちら

そして何と言っても指揮者デビューしたレディーマエストロ・手塚先生の指揮ぶりがカッコよかったです。音量を上げるところでは明確なアクションで指示してくださったり、カデンツァの終わりを4小節前から指でカウントダウンしてくださったりと、とてもわかりやすく堂々とした指揮者ぶりでした。音量を下げるところで譜面台と同じくらいの高さまでしゃがみこむ姿を見て「あら、この姿どこかで見たことがあるような…」と思ったら、プログラムのプロフィールに「指揮を西谷国登氏に師事」と書いてありました。

アンコールとして東海林先生がソロ演奏をしてくださいました。その優雅な音を聴いていたらホールの天井を幾人もの天使が飛ぶのが見えました。それと同時に、至近距離で演奏を聴くことで、ハープという楽器のすごさも知ることができました。右手の親指でメロディーを弾きながら他の指と左手で伴奏を弾く技も、一人で二人分のことをやっているようで十分すごいのですが、もっとすごいのが足技です。ハープには7本ものペダルが付いていることをご存知でしょうか?ピアノの黒鍵にあたるものがないハープはこのペダルで半音の上げ下げを行います。ド〜シのそれぞれに対応するペダルがあって、足で操作しています。優雅な楽器に見えるハープですが、ロングスカートの下では忙しく足を動かしているのが後ろからよく見えました。そんな神業を間近で見れたこともまたとないすばらしい体験でした。

第三曲目 チャイコフスキー『弦楽セレナード』

石オケとして3回目の演奏でした。古株団員である筆者にとっても3回目の弦セレでした。個人的には、余裕をもって弾ける部分がある一方、以前も弾けていなかったところが本番になると今回もやっぱり弾けずちょっと悔しい思いも残りましたが、マエストロの意図も団員たちによく伝わっていて全体的にはよい演奏ができたのではないかと思います。特に人数も増え、毛利先生と大木先生の講師2名体制なったチェロの充実ぶりのおかげで、以前より厚みのある音が出せていたように思います。完璧な演奏はできなかったけれど、とても楽しく弾き切ることができました。

アンコール 芥川也寸志『トリプティーク』第一楽章

石オケの定番曲となりつつあるこの曲です。今日の演奏の勢いそのままに、今まで弾いたことがないくらいの高速演奏でした。何度も指がもつれそうになりましたが、これもまたものすごく楽しく弾けました。

演奏を終えて改めて振り返ると、今回はハープの音も他のパートの音も、それから自分の音も、いつもよりよく聴こえていたような気がします。演奏に余裕があったから?いやいや、Chat GTPの言うとおり適度な空席があったおかげでしょう。また、どの曲についても団員一同、とても気合が乗っていて練習より数段迫力ある演奏ができていました。これもまた、Chat氏が言うとおり耳の肥えた聴衆からの熱い視線を感じたからなのかも…という気がしてきました。でもね、さらによく考えてみたら、このChat氏の「お告げ」を我々に授けたのはマエストロでした。結局、我々はChat氏にかこつけたマエストロの術中に完全にはめられたということですね。

昨年の演奏会は、終演とともにさようならでしたが、今年は違います。終演後はお約束の打ち上げが待っていました。こちらは何も言うことはありません。団員たちの弾ける笑顔を写真でご覧ください。

別れ際、今シーズンから参加された団員の方から「楽しかった。また秋にお会いしましょうね。」という言葉をいただきました。何より嬉しい言葉でした。

はい、もちろん。またお会いできる日を楽しみにしています!

最後になりましたが、共演いただきました東海林悦子先生、ご指導いただいた西谷先生はじめ講師の先生方、賛助出演の皆様、ステージマネージャーと受付を快くお引き受けくださった東京農大OBOG管弦楽団の皆様、朝早くから奔走してくださった事務局の皆様、足下の悪い中お越しいただいた「耳の肥えた」お客様、そして団員の皆様にこの場を借りて感謝いたします。本当にありがとうございました。

by A.E<Vn>

西谷国登音楽監督の第9回定期演奏会についてのブログはこちら

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