2月3日。石神井公園の周囲には、まだあちこちに先週の雪が残っています。石神井池もすっかり氷に覆われていますが、寒さに負けず今日も練習です。
練習前に、いつものように楽器のウォーミングアップをしていると、入口から黒ずくめの服に身を固めた男性が2名、ものものしい機材を持って入ってきました。
今日の練習会、本当は練習会ではなくて「練習会のふりをした本番」なのです。
何を言ってるのか、わかりませんね。
実は、石オケの活動が、某テレビ局の旅番組で取り上げていただけることになり、今日は、その撮影日なのです。この後、番組の主人公である旅人役のタレントさんも登場することになっています。
石オケでは、定期演奏会や区民コンサートの模様などを地元のケーブルテレビで取り上げていただいたことはありますが、今回は、グレードアップして全国放送!ということで、マエストロも力が入っています。前回の練習会の後半で、バッハのブランデンブルクの第3楽章とバルトークの第1楽章の1ページ目だけを、何度も反復練習した(させられた)ことを、読者の皆様、覚えておいででしょうか?特訓の訳は、今日の撮影にあったのです。
番組の詳細は、制作側のOKが出るまで明らかにできないのですが、とにかく、今日は練習時間をフルに使って撮影が続きます。番組での石オケの登場時間は、たった5分らしいのですが、いろいろなシーンを撮影するごとに注文が出てなかなか忙しかったです。
しかも、油断していると突然カメラを向けられたりするので、常ににこやかな表情をしていないといけなかったり…
実際の放映時間は短くても、撮影の時間はその何倍も長くて、団員の個人インタビューの場面でも、その裏でずっと弾き続けて、かなり疲れてきたところで、いよいよ全体練習シーンの撮影となりました。
マエストロ、カメラを向けられて、いつも以上に張り切っています。常にサービス精神旺盛なマエストロです。ちょっとカメラを意識しすぎなような気もしますが、インターナショナルオーケストラへの道が、また一歩前進するきっかけにしたい、という思いが伝わってきます。
今日の撮影に先立って、実は先週の土曜日にも、マエストロは急遽日程を設定して、自主練習の場を提供してくださいました。
題して『豪華自主練』!!
急な日程設定にもかかわらず、半数以上の団員が参加して熱のこもった練習ができました。ブランデンブルクのパートごとに車座になって、ボウイングや指づかいを確認し合ったり、難しいところを徹底的にさらったり、と細かな確認ができました。また、お忙しい中参加してくださった安藤先生と毛利先生から、それぞれ個別に指導していただくことができ、有意義な時間になりました。
ヴァイオリン組は、安藤先生から、p(ピアノ)やpp(ピアニッシモ)の弾き方について「弓を少ししか使わない弾き方では、大きなホールの中では響くpとして聞こえない。指板に近い部分を弓の毛1~2本まで傾けて、逆に弓を大きく使って弾くことで輝かしいpの音が出る。」とか「開放弦の音を響かせて弾くとバロックらしく聞こえる。」といった、とても実践的でわかりやすい助言をいただいて、何だか、急に上手くなったような気がしました。
後半の30分は、毛利先生による、ありがた~い講義の時間でした。
演題は
『バロック音楽におけるヒェラルキー』
ヒェラルキー、何だかご存知ですか? 「階層制」「階層構造」のことです。
皆さんは9月9日の練習会 で毛利先生がされた「尊い音・卑しい音」のお話を覚えていますでしょうか?この日の講義は、あの話の拡大版です。バロック音楽には、拍に上位下位の階層があって、1拍目→3拍目→2拍目→4拍目の順に価値が高い(すなわち大事な音)というお話でしたね。これが<拍のヒェラルキー>ですが、バロック音楽には、これ以外にも様々な切り口のヒェラルキーがあって、それらを意識して演奏することが大切、という講義でした。ダウンボウは上位、アップボウは下位、という<ボウイングのヒェラルキー>、全音符が最上位、十六分音符が最下位という<音符のヒェラルキー>、肩から動かすのが上位、ひじから動かすのが中位、手首を動かすのが下位という<支点のヒェラルキー>といった具合です。そして常に、エネルギーは最も上位の音に宿るようにと、実演を交えて語ってくださいました。話はますます難解となった感がありますが、筆者なりに「階層の異なる不均一な音を厳格な秩序に則って弾き分けることでバロックらしい音楽が完成する」ということだ、と勝手に解釈し、すっかりわかったような気になったのでした。
安藤先生毛利先生のおかげで、文字どおり『豪華』な自主練となったこの日でしたが、あれ~、確か「8時までには行きます」と言っていたはずのマエストロが、いつまでたってもやってきません。「言いだしっぺなのに~」と思っていたら、何と、今大流行中の<インフルエンザB型>に罹って自宅療養中とのことでした。それはたいへんでしたね。でも、今日の撮影日にはすっかり回復されてよかったです。
さて、話を今日に戻して
いよいよ全体合奏シーンの撮影です。『豪華自主練』の成果を発揮しましょう。さて、その結果は……
いやいや、何があったかは放送までは言えません。見てのお楽しみです。
通しで全体合奏を撮影した後も、いろいろなアングルから撮影するために、一部分だけさらに数回演奏して、本日の撮影は無事に終了しました。
放送の詳細につきましては、放送決定しだい改めて、このホームページ上でご案内したいと思います。われわれ団員も、どのような映像に仕上がってくるのか、楽しみにしています。ご期待ください。
「みなさん、お疲れさまでした。もうブランデンブルクはおしまいです。次回から、バルトーク本気でやりますよ!!」
マエストロに力強く念押しされて、今日はお開きとなりました。
by A.E.<Vn>