10月27日。今日の練習会は、特別講師・安冨洋先生によるマスタークラスです。
安冨先生は、元東京芸大附属音楽高等学校の先生で、現在は武蔵野音楽大学で非常勤講師を務めていらっしゃる、ヴァイオリニスト兼指揮者とのこと。
マスタークラスでは、どんな先生がいらっしゃるかと、いつも緊張の面持ちの団員たちですが…
右の写真の左側が、安冨先生。とても温和な雰囲気に包まれた優しそうな先生です。
ああ、よかった…
今日は、第6シーズンとしてこれまでやってきた曲目の中から、チャイコフスキー『弦楽セレナーデ』の第三、第四楽章をみていただく予定です。
おとなしい感じのレッスンになるのかな、と思っていましたが、さて、いざ始まってみると、安冨先生のレッスンは、意外と熱い!そして合間合間に、とぼけた味の冗談が挟まり、笑いの絶えないとっても楽しいレッスンとなりました。
今日のレッスンで指導していただいたことを一言で言えば、やはり「オーケストレーション」の大切さ。各パートは、パートトップの元で目指す音楽を共有し、そうしてできあがった5つのパートが互いに連携し合ってひとつの音楽を作っていくのがオーケストラだということを、改めて教わった気がします。
指揮者が作りたいテンポ感をキャッチしたら、その後は指揮を待っているのではなく「自分たちで作っていく姿勢が大事」そしてパートの中でそれを共有していくためには、トップが身体で伝えていく必要がある、という言葉は印象に残りました。
また、ストリンジェンド(だんだん速く)の部分について「ストリンジェンドをリードするのは1stヴァイオリンじゃないよ。2ndの2拍目の音が作っていくんだよ。」とか、ほんのちょっとした繋ぎの部分で「ここはチェロのこの音が大事」とか、楽譜を見ているだけでは、見逃してしまいそうな音が、音楽全体の中ではとても大切なことも教えていただきました。
さらに、ユニゾンの多い第四楽章では、大きなホールの中では、高音が目立ってしまうとかえって音が薄くなってしまうので、1stヴァイオリンは、低音パートの音が自分で聞こえるくらいの大きさで弾くとよいことも教わりました。
指導ぶりも指揮ぶりも熱いところのある安冨先生でしたが、時々、とぼけた顔でご自分の失敗談を冗談半分に語ったり、当意即妙に面白いことを言ったりして、団員たちを、たくさん笑わせてくださいました。
第三楽章の最後のハーモニクスが決まらなかったときは
「あれ、ここの最後って、こんな宇宙みたいな音だっけ?」
と言って、各パートごとに音を確認させて「宇宙の原因はヴィオラでした。」と笑いをとってから、ハーモニクスは指の腹を広く使うと失敗しないことをちゃんと教えてくださいます。
誰かが付け忘れていたミュート(弱音器)を取りに行くと
「ミュートって、よくなくすよね、僕は今までに10個くらいなくしました。そのかわり、20個くらい拾った。」
と笑わせてみたり、コントラバスの名前がとっさに出てこなくて、コンマスの方を見て
「あの楽器、何だっけ?」
ととぼけたり。(そういえば「コンバス」と「コンマス」って響きに近いものがありますね)
オーケストラでは、練習番号(A,B,C…)を呼ぶときに、ちょっと気取って
「アメリカのA,ベートーベンのB」
とか言ったりしますが、安冨先生の呼び方はふるっています。
「代官山のD」
「五反田のG」
笑いがもれましたが、われら日本人には、こちらの方がしっくりくるような気もしますね。「ショパンのC」とか言われても、とっさにはわからず「あれ、ショパンってCだっけ?」とか邪念がよぎりますので。これから石オケでも流行りそうですね。
「石神井公園のS」
「大泉学園のO」
とかね。
真剣になったり、大いに笑ったりして、あっという間にマスタークラスの時間は過ぎてゆき練習終了。ふりかえってみたら、予定の第三、第四楽章をぴったり時間どおりに終え、ヴァイオリンにもヴィオラにもチェロにもコントラバスにも、しっかり要点を指導していて、その上、あんなにみんなを笑わせて、何かなら何まで完璧な安冨先生でした。
が、安富先生、ひと言だけ失言がありました。
西谷先生のことを、親愛の情をこめて
「あっちのおじさん」 と言った瞬間、
「えっっっ!!」 と不満の籠った反応が…!!
石オケが取材してもらったあのNHK-BSの番組の「西谷先生は若いころ…」というナレーションに異議を唱えた時と同じトーンでありました。
安富先生、地雷を踏んだ一瞬でした。
何のことかよくわからない方は、下記の日誌をお読みください。
安富先生
楽しいマスタークラスをありがとうございました。教えていただいたことを来年の定期演奏会で活かせるよう、これからも練習をがんばっていきたいと思います。
最後に、西谷マエストロが激写した、安冨先生の熱い指揮ぶりのショットをご覧ください。。
by A.E.<Vn>