5月27日(日)、午後6時開演というイブニングコンサートとして、第5回石神井Int’lオーケストラの定期演奏会が開催されました。
一夜明け、昨日の出来事がすべて夢の中のことだったような気がする気だるい朝を迎えました。それでも身体のどこかにさわやかな充実感が残っていて、昨日あったことは確かに現実のことだったと実感させてくれます。
実は、演奏会前日の5月26日の夜9時半過ぎまで、石オケは演奏会の会場であるここ「けやきホール」のある施設内の別室で最後のリハーサルを行っていました。そして、当日の集合時間は、何と、朝の9時40分。本番の開始は午後6時というのに、朝イチから、次年度ポスター用の写真撮影と軽いリハーサルに臨みます。
「このまま、ここに泊まりたい~」
という声が上がるのも道理と思えるハードスケジュールの今年の定期演奏会です。
それというのも、今回は姉妹オケの「クニトオケ」(ユースオケ)の定期演奏会と同日開催となり、子どもたちの待ち時間とか、クニトオケで使われるピアノの搬出入のことなど諸般の事情を勘案した結果、大人(石オケ)がつらいスケジュールを引き受けることになったようです。とはいえ、2つの演奏会を取り仕切る事務局の団員や舞台づくりに汗を流しているステージマネージャーや男性団員たち、そしてマエストロをはじめ、昼夜両方の公演に出演する賛助団員たちの苦労を思えば、待機時間の長いことに文句を言っては罰が当たります。
そんな訳で、リハが終了したところで一旦解散。6時間後の再集合を確認して「じゃあ、また後で」と団員たちは三々五々散っていきます。団員たちのいなくなった控室には、夜の本番を待つ衣装たちだけが残されていました。
長い休憩時間の過ごし方は様々。一旦帰宅して家事を済ませてくる人、最後の最後まで楽譜の検討に余念のない人、ホール近くのファミレスのドリンクバーで粘る人、そして休憩時間返上で働きつづける人…(ステージマネージャを務めた団員は、本番開始の前にすでにダウン寸前だったとのことです)
そんなこんなで朝日に輝いていたけやきホールに西日が射し込む頃、団員たちが再び控室に戻ってきました。受付には、協力会員の志栄学舎様からのお花も届いています。思い思いに、本番前の「もぐもぐタイム」でお腹を満たしたところで、いざ出陣!
まったく音出ししないまま本番の舞台に上がるのが不安な団員たちは、わずかな時間を惜しんで、やっと開放された舞台裏の控室や舞台の袖で、最後の音出しをしています。
さあ、そして、いよいよ本番開始!!
と思ったら、なんと、舞台の椅子が足りない!どこかで計算違いがあったようで、後方の団員たちが座る席がありません。あわてて椅子と譜面台を追加調達。
う~ん、今日の演奏会、大丈夫か!?何かが起こりそうな予感…
とよぎった不安。でもそれはまったく気のせいでした。演奏が始まってみると、石オケは「本番に強い」というところを次々と実証してみせたのでした!!
一曲目の『ブランデンブルク協奏曲』。NHK-BSの番組出演のためにたくさん練習を重ねた成果は本物でした。マエストロの『バッハの楽譜は心電図』理論(→詳細はこちらをどうぞ)も、難解だった毛利先生の『バロック音楽におけるヒェラルキー』の原則(→詳細は こちらの後半で)も、いつのまにか団員たちは、身体でマスターしていたようです。公演アンケートの中に「メリハリがある演奏でよかった」との感想をいただきましたが、これこそまさに、毛利先生のおっしゃった『尊い音・卑しい音』の区別がはっきりついた演奏だったことの証なのではないか、とみんなでちょっと胸を張りました。演奏しているわれわれの耳にも、とても心地よく聴こえた今日のバッハでした。
おっとっと、それからもう一つ大事なことを書き忘れました。毛利先生の自作自演の第二楽章、しびれましたね~ 一緒に演奏しながら、時としてこういう贈り物をいただけるところが石オケの醍醐味です。毛利先生、素敵な贈り物をありがとうございました。
二曲目は、いよいよゲスト奏者、ルドルフ・ハケン先生との共演曲、モーツァルトの『クラリネット協奏曲(5弦ヴィオラ版)』です。先週、昨日、そして午前中のリハと重ね、徐々に合うようになってきたとはいえ、ハケン流のゆらしについていけずに、ここまでの練習ではどこかぎこちない石オケでしたが、何の奇跡か?本番では、バッチリ、ハケン先生の世界を壊さない伴奏をすることができました。これまで一度も決まらなかった、第二楽章の入りのテンポも無事にクリアし、ハケン先生も満面の笑顔でした。「大きすぎる伴奏の音」をいかに小さくするかが課題でしたが、本番では、かなりよいバランスにもっていけていたように思います。実は、このモーツァルトに関しては、ハケン先生の来日前には、1~2回譜読みをした程度で、定例の練習会ではほとんどやらず、団員の自主練扱いでした。「何で練習でやらないのだろう」と団員たちからは不安の声も上がっていたのですが、こうして、本番を迎えてみて、これは、ハケン先生の演奏から団員たち自身が感じ取ったものを生かすために、マエストロはあえて細かい指示をしない選択をしたのかも、と思えてきました。本番大成功の要因は、マエストロの深慮遠謀にあったのかもしれませんね。
それにしても、石オケは、モーツァルトの世界に関しては、かなりモノにしてきたかな、と実感した演奏でした。筆者個人としては、舞台配置の関係で、本番では思いがけずソロ奏者と第一列の音が最も聴きやすい位置で演奏することができ、本当にラッキーでした。自分の音がソロや管楽器(第一列は管楽器パートを弦で奏でています)と絡み合うのを体感し、手塚先生にも負けないくらい幸せな顔で演奏していた…かもしれません(笑)
長い長いモーツァルトの演奏が、万雷の拍手で締められた後には、ハケン先生がアンコールとして、超有名なバッハの無伴奏チェロ組曲(第1番)を5弦ヴィオラで演奏してくださいました。ごつい形の5弦ヴィオラをごつい身体のハケン先生が演奏している図から想像できないくらい繊細な音に心が洗われました。
15分間の休憩時間は瞬く間に過ぎてゆき、いよいよ、後半。第三曲目、バルトーク『弦楽のためのディヴェルティメント』 の時間になりました。演奏を始める前に、石オケの名物コーナーになろうとしているという噂のマエストロによる曲目解説がありました。何と、この曲目解説が、来場者アンケートの中で、評判第一位でありました。バルトークの音楽にあまりなじみのない来場者の方々にもわかりやすいように、各楽章の代表的な部分を団員たちに演奏させながら「民俗的な旋律」「変拍子」「全音音階」「バルトークピッチカート」などについて解説し、曲目への期待感を高めさせる、というものでしたが、演奏者である団員たちにとっても勉強になり、また、この解説があることで、けっして演奏者が拍子を間違えたり、変な和音を出したりしているのではないことを観客にわかってもらうために役立つという意味でもありがたいものでした。ピッチカートの紹介のところで、伊東先生が「かえるの唄」で笑いをとったりして、場内の空気もだいぶ和みました。
マエストロの語りも、なかなか流暢でMC力がアップしましたね、と褒めようと思っていましたが、筆者は、マエストロがMCの中でたいへんな間違いを犯したことに気付いてしまいました。冒頭のあいさつの中で、石オケがNHK-BSプレミアムの番組で取り上げていただいたことで知名度がアップしたということを述べたのですが、何と、肝心な番組の名称を間違えて紹介しておりました。「日本列島ぶらり旅」とか何とか適当なことを言っていましたが、正しくは『ニッポンぶらり鉄道旅』です。NHKさん、ごめんなさい。お詫びして訂正いたします。
さてさて、いよいよ、演奏開始です。曲目解説で演奏者もリラックスしすぎたせいか、第一楽章の冒頭こそ、やや緊張感を欠いていましたが、第二楽章、第三楽章、と進むごとにどんどん調子が出てきて、これまた、今までのどの練習よりもよい演奏ができました。練習の時には、どうしても自信が持てず周りの様子見だったフレーズの切れ目や、テンポの変わり目も、堂々と決めることができていたように思います。途中、一瞬、小節がずれかけたところがあったのですが、石オケのチームワークに裏付けされた阿吽の呼吸でしのぎ切りました!!!もちろん、まだまだ不完全なところはいくつもあるし、自分のパートを弾き切ることが精一杯の状況では、マスタークラスで杉浦先生に指導していただいた全体での音楽性の共有などには程遠い段階であることもわかっています。それでも、この難曲を全員の力で乗り切ったこと、「バルトーク海の荒波」を乗り越えられたことは、誇りに思ってよいと感じています。
そして最後はアンコール曲、グリーグの『過ぎにし春』。マエストロが「それではお口直しに」と紹介したことでかえって動揺し、さらに思ったよりテンポがゆっくりだったこともあり、思わず「お耳障り」な音を出してしまいそうになった筆者でしたが、何とか立て直して、無事に今日の定期演奏会を終えることができました。
という訳で「本番に強い石オケ」を実証した感のある今日の定期演奏会でしたが、「本番に強い」はけっして褒め言葉ではありません。本当は練習でも本番でも、どちらでも強くなければ真の実力とは言えないのです。いつ、いかなる時も同じパフォーマンスができる打率十割の石オケを目指して、次のシーズンもがんばっていきましょう!!
定期演奏会の様子と講評については、西谷先生がご自身のブログを綴られています。こちらの方も忘れずにお読みくださいね。
石神井Int’lオーケストラ/クニトInt’lユースオーケストラ・第5回定期演奏会終演 (西谷先生のブログから)
音楽の宴を終えて、今度は別の楽しい宴へ。演奏の後は、昨年と同じ居酒屋の昨年と同じ部屋で、昨年を超えた盛り上がりの中で、乾杯です。マエストロも乾杯!ハケン先生もKanpai!!
演奏会の後の宴に何の言葉もいりません。今年も弾ける団員たちの笑顔を見てやってください。
最後になりましたが、本日の定期演奏会を大成功に導いてくださいました、すべての皆様に感謝します。今シーズンも多くのことを学ばせてくださったマエストロと講師の先生方、楽しい共演を再度可能にしてくださったルドルフ・ハケン先生、ありがとうございました。ステージマネージメントや受付事務を手助けしてくださいました佐藤さん、田邉さん、川名さん、ありがとうございました。事務局のみなさま、ステージづくりに奮闘してくださった団員のみなさま、本当にお疲れ様でした。そして、9か月間、練習を共にし、泣き笑いを共にしてきたすべての団員のみなさまに感謝します。ありがとうございました。
石オケは、8月末まで、3か月間、いつもより少しだけ長い夏休みに入ります。と同時に、この不定期ブログ(といいながら、けっこう律儀に定期更新してきましたが)も、夏休みをいただきます。第5シーズンもご愛読いただきありがとうございました。
AE<Vn>