10月26日。三週間ぶりの練習会です。この間に降った2回の大雨の影響でしょうか。石神井池は溢れんばかりに増水しています。裾の泥はねを気にしつつ、練習開始です。
その前に・・
来年の定期演奏会のフライヤーができあがりました!デザイン制作にご協力いただきました、Coffca社玉井様、Mogic社山根様に感謝申し上げます!
今回は、2パターンのフライヤーが用意されています。前回までと同じテイストの“クラシカルバージョン”のものと、もう一つはメルヘンチックな“かわいいバージョン”のものです。後者はこれまでの石オケのイメージを一新するような斬新なデザインですが、さて、みなさまはどちらがお好みでしょうか?
練習開始の時間となりましたが、マエストロは、なんだか浮かない顔をしています。通販がらみのネットトラブルがつい昨日発覚したとかで、そのことで頭がいっぱいの様子です。が、心の動揺を振り払うように「さあ、始めましょう!」の掛け声で練習が始まりました。
前半はブリテンの『シンプルシンフォニー』を通しで練習しました。この曲は大曲ではありませんが、多彩な要素を含んでいて、どの楽章も気が抜けません。
第一楽章の冒頭、まずは最初の呼吸を揃える練習から。
「鼻息も音楽です。」
満足いく鼻息に達するまで何度も繰り返し、早くも心拍数が上がりました。第一楽章のポイントは、拍の途中の思わぬところで随所にでてくるアクセントをきちんと利かせること。これが案外トリッキーです。第二楽章は、途中で指がもつれそうになる全編ピッチカート、第三楽章はしつこいくらいに荘重なサラバンド、と、ひと楽章終わるごとに、あちこちから団員のため息がもれる中、マエストロのボルテージはどんどん上がっていき、第四楽章は最初から猛烈なスピードで始まり…
マエストロはいつしか、ノリノリになって、完全本番モードで振っていました。
「いいですね~、ここで練習している間は、ネットのことを忘れていられるから。ああ、この時間が永久に続けばいいのに…」
マエストロの悩みは、相当深刻のようです。しかし、そのあおりでしごかれる迷える子羊たちは、前半だけで息も絶え絶えになったのでした。
後半は、少し落ち着いてエルガーの弦セレ…かと思ったら、
「気が変わりました。トリプティクをやります!」
ネットの悩みを忘れるためには、エルガーよりトリプティクの方がいいみたいです。もっとも「芥川(あくたがわ)」のことを「たけのうち」と言ったりして、やっぱり気もそぞろなのかもしれません。
トリプティクももちろん、最初から本番のテンポで始まります。この曲のポイントは猫の目のような拍子の変化と音型ごとに変わっていく弓の使い方なのですが、そのどちらもまだ自分のものにできていない団員の多くが、ギブアップしそうになります。そのたびに、マエストロに目ざとく見つけられて「はいはい、ちゃんと弾いてください。」と声がかかるので、こちらも気が抜けません。家でじっくり指順や弓使いの確認をした上で、練習会でこのテンポ感を身体に染み込ませていく、その繰り返しが大切だと感じました。
最難関の第三楽章もようやく終盤まで至り、団員たちの疲れがピークに達した頃、マエストロが、急に表情を曇らせてボソッとつぶやきました。
「ああ、もうすぐ練習が終わってしまう。せっかく忘れてたのに…」
次回の練習会までに、事態が好転していることを団員一同、心よりお祈りしています。
by A.E.<Vn>